計量技術情報 【計量豆知識 第4回】

1. 侮りがたし抵抗器

 お客様の現場に伺った弊社の熟練技術者が、「A&Dのロードセルとインジケータで新しく計量器を作ったら、1時間に何十目も指示値がずれる。」と苦情を言われてしまいました。

 その技術者は、丹念に現場を調査し、ネジや圧着端子の緩み、プリント基板の汚れ、ロードセルケーブルや端子台の材質、シールド配線の有無など、考えられること全てをチェックしました。しかし、どうしても原因が掴めず、帰らなければならない時間を迎えてしまいました。

 ですが、注意深い性格の彼は、「あとはお客様の作った和算箱しか考えられない!」と思い、お願いして和算箱※1の内部のプリント基板をお借りしてきました。

※1
和算箱
複数のロードセルを接続するはかりを作る場合、各ロードセルの配線を接続するためのもの。一般に各ロードセルの出力がお互いに影響しないようにするための抵抗(緩衝抵抗)が入っています。この抵抗は、各ロードセルの出力(SIG+、SIG-)に挿入するもので、温度係数と誤差が小さいことが求められます。

 会社に戻った彼は、私にその基板を見せてくれました。絶縁性の良いPBT樹脂製の端子台と、見るからに高級そうな黒光りする抵抗器が取り付けられた綺麗な基板で、どこかに問題があるようには見えませんでした。 しかし、念のためと思い抵抗のリード線に磁石を近づけてみました。すると磁石は「カチッ!」と勢いよく吸い付けられたのです。ということは、この抵抗のリード線は鉄を含んでいる可能性が高いのです。

 鉄は安価で丈夫な金属ですから、あらゆるところに使用されています。しかし、銅との間に熱起電力の起きやすい素材であるため、微小電圧を扱う回路には向きません。 今回の例では、この抵抗器のリード線が熱電対※2として働き、わずかなボード上の温度不均衡を電圧に変換してインジケータに出力していたのです。

※2
熱電対(ねつでんつい)
温度差を電圧に変換する素子。一般的に異なる種類の金属を接合して作ります。 使用温度範囲や用途に応じて非常に多くの種類があります。

 その後、この抵抗器は耐熱性や耐衝撃性などを重視したもので、リード線には鉄を芯にした銅線を使用した特殊なものであることが判明しました。お客様には熱起電力の少ない抵抗器を紹介することで解決しました。

 たかが抵抗器などと甘く見ないほうがいいということを痛感した出来事でした。


2. お願いだからアースを繋いで!

 東南アジアのお客様から、「何度交換してもウェイングインジケータがすぐ壊れる。この前なんか交換して2週間で壊れた!」との情報があり、調査をすることになりました。 しかし、すぐ壊れると言われたインジケータは弊社のロングセラーのもので、めったに壊れるというものではありません。このような場合、現場に特有の原因があることが多いものです。ですが、海外の現場です。すぐに伺うわけにはいきません。それで接続図を送っていただくことにしました。 しばらくして私のもとに届いたのは、古文書のような破れた図面をスキャナで写した非常に見難い図面でした。しかも日本語の。どうやら20年近く前に日本の会社が組み立てた計量器を海外に輸出したもののようです。

 その図面を判読するのはなかなか大変なことでしたが、拡大してみているうちに「電源コード 2P」との記述を発見しました。電源コード2Pという意味は、AC電源の2極しか接続せず、アース線は配線しないということです。「何てことを!」私は思いました。

 確かにアースは接続しなくてもウェイングインジケータは動作しますし、家電製品の多くには2Pの電源ケーブルしかついていません。

 しかし、家電製品と異なりウェイングインジケータにはロードセルケーブルをはじめ、いくつも長いケーブルが、時には屋外まで接続されています。 そのため、アースなしの状態で落雷や静電気などのノイズ電圧を受けると、それがウェイングインジケータ内部の電子回路を通過して逃げるので、回路に打撃を与えてしまうのです。

 日本では家庭のACコンセントは2Pのものが多いのですが、オフィスや工場では接地端子のついた3P形のコンセントが普及しています。しかし、アースを繋がなくても機器が動作するという経験から、残念なことにアースは軽視されてしまうのです。

 この記事を読まれている方も、今お使いのパソコンがデスクトップだったら、アース線が接続されているか確認してくださいね。